太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その5 自分を偽った訳
Written by B
「高見くんが勉強と運動でかまってくれなかったというと?」
「うん、ランニングしてたらスポーツに目覚めてサッカー部に入ったの。それから深夜まで猛勉強だから私と接する機会がなかったの」
「………」
奈津江には深夜猛勉強する公人と隣の部屋からカーテン越しに指をくわえて見ている詩織の姿がなんとなく想像できた。
おかしいく感じながらも、詩織の寂しさもわかるような気がした。
「でも、学校ではなかったの?」
「それが……」
「今の詩織なら、周りがどうでも高見くんといちゃいちゃしてそうだけど?」
「そんなことないわよ、学校では節度を守ってるわ……でも、中学ではできなかったなぁ」
「なんで?」
「猫の皮かぶっちゃった……」
「ここに入学したときみたいに?」
「うん……」
詩織は力無く返事した。
奈津江はそれを見て、このことを相当後悔しているように思えた。
「あのね、さっき私が勉強で学校トップって言ったよね?」
「うん。入学の時でしょ?」
「そのとき周りから『すごいすごい』って言われて、それが鼻高々で……」
「それは誰だって思うわよ。それで?」
「それだけじゃなくて色々言われたの」
『ねぇねぇ、藤崎さんって美人だよね』
『お嬢さまって雰囲気だよね。言葉遣いとか丁寧で綺麗そうね』
『きっと、家でも上品に過ごしているんじゃないかな?』
『なぁ、藤崎ってかわいいよなぁ』
『男とかいるのか?』
『いや、いない感じだったけど』
『おおっ!チャンスじゃないか!』
『でも、ああいうタイプって難しいぞ』
『う〜ん、清純そうだもんなぁ……遊ばなそうだもんなぁ』
『藤崎さんって、誰にでも親しくなれそうだよね』
『好き嫌いがないって感じだもんね』
『怒らなそうだし、優しそうだしね』
「へぇ、結構いいじゃない」
「とんでもないわよ!私と正反対だったのよ!」
「えっ?」
いい評判と思っていた奈津江は、詩織の反応は予想外と思いつつも、すぐに当然の反応だと気づいた。
そして、詩織の次の言葉にものすごく納得する。
「私は!
言葉遣いは荒い!
敬語は知ってるけど、その程度!
私はどっちかというと下品よ!
なにが清純よ!
そんなもん生まれたときにお母さんのお腹に置いてきたわよ!
それにそのころの私は結構好き嫌いが激しかったのよ。
今はそうでもないけど……
とにかく!
私は聖母じゃないんだから!」
詩織は一気にまくし立てると、ふぅっと息を整えた。
「なるほどね」
「でも……私はさっきの言葉が嬉しくて、その言葉に乗っちゃった。学校での私は上品で礼儀正しく清純で文字通りの優等生」
「演じてた……ってこと?」
「うん……最初は面白かったけど、段々辛くなって。でも、今更それを変えたらなんと言われるか……嫌われるんじゃないかと思ってできなかった……」
「結局、卒業そのキャラを続けるしかなかったってこと?」
「ううん、高校入ってからもそのまま……わかるでしょ?」
「うん、よくわかる」
「だから、学校と現実のギャップが辛くて……段々家での性格が激しくなっちゃったの」
「どんな?」
「聞きたい?鼻血だしても知らないわよ?」
「何で鼻血だすのよ?それに聞かなくても話すんでしょ?」
「よく、わかってるわね」
「わかるわよ、これでも素の詩織とつき合ってる期間は長いんだからね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
詩織の暴走は次回に持ち越しました。
今回は今まであれだけの事をした詩織がなぜ優等生になったのかを書いてみました。
次回こそ詩織が暴走します。