太陽の恵み、光の恵 外伝
第1集 不良少女と呼ばれて〜詩織と公人〜
その7 詩織がぶたれた訳
Written by B
「もう、竹刀持って怒鳴り込んだわよ。学年1位になったのに『やったよ!』とか『ありがとう』とか言ってくれてもいいのに!何も言わないなんて絶対に許せなくて。あの時の私は完全にイカレてたわ」
「いつもイカレてるってツッコミはなし?」
「それはひどくない?いくら何でもあのときの私は普通の私じゃなかったわよ」
「そんなだったの?」
「ええ」
『公人!』
ばしっ!
『うわぁ!詩織、何だよ!』
『公人、学年1位でしょ!なんで私に言わないのよ!』
『そうだよ、詩織なら見てるからわかってると思って……』
『確かに知ってたけど、私に言うことがあるでしょ?』
『えっ?』
『しらばっくれないで!』
ばしっ!
『うわぁ!だから、床を叩くなって!』
『「今日は撲たれなくていいよね?」とか「今日は俺がお仕置きだ!」とか言わないの?』
『えっ?……そんなのわざわざ俺から言うことがないかと思って……』
『そうなの?じゃあ私から言ってあげるわよ!』
『な、何を?』
『私を叩きなさい!私が1位を取れなかったお仕置きを公人がしてよ!』
「そういって、私は公人に竹刀を投げつけたわ」
「……そして?」
「公人の前に四つんばいになったわよ」
「高見くんは?」
「竹刀は持ってくれたけど、どうしていいかわからずにおろおろしてたわ」
『なにやってるのよ!私を百叩きしなさいよ!』
『で、でも……』
『今まで、叩かれて悔しくなかったの?復讐したいから勉強頑張ったんでしょ!』
『ま、まあそうだけど……』
『だったらやりなさいよ!今までの復讐をしなさいよ!』
『でも、そんなことしたら詩織が……』
『今までの分を返しなさいよ!これ以上私に恥をかかせないでよ!』
「決まり文句が見事に決まったわね」
「『恥をかかせないで』って状況が違うわよ」
「でも、公人は決心してくれたわ」
ぱしっ!
『弱いわよ!もっと強く』
ばしっ!
『私はこんな弱く叩いていない!』
びしっ!
『痛い!』
『大丈夫か!』
『大丈夫じゃないわよ!でも、これでいいのよ。このまま続けて!』
「それ……ただのSMプレイって言わない?」
「そうね、半分そうだったわね」
「それで、詩織は百回分を?」
「違うわ。今までの分を全部返してもらったわ」
「今までの分って……えっ?」
「そう、1500回叩いてもらった」
「また、とんでもない数を……さすがに驚いたわ」
「公人は本当に悔しかったと思うの。だからそれが晴らせればと思って……それに私も公人と同じ辛さを感じたかったから……あとは、ずっと疎遠だった公人とスキンシップを図りたくてもう無我夢中で……」
「でも、叩く方も叩かれる方も大丈夫だったの?」
「全然。公人は竹刀を振る筋肉が限界だったし。私は全身を叩かれて四つんばいを保つのも必死だった。でも、私たちはやめようとしなかった。なんでだろうね?なんか、お互いに気持ちをぶつけ合っているのを感じてたかもね」
「私詩織からSMの話何度も何度も聞いてるけど、SMってそういうもんだっていつも言ってなかった?」
「うん、だってそうだもん」
「そして最後は?」
「6時間叩き叩かれてようやく終わった。終わったとたん、私と公人は重なるように倒れたわ。そしてそのまま一緒に朝まで眠っちゃった」
「………」
「あのとき、確かに私たちの心は一つになっていた。でも、私はその場でさえ『好き』って言えなかった。あの時どうして言わなかったのかと思うと悔しくて……」
「高見くんは?」
「実は、公人はあの時意識がもうろうとしながらも私に言ってくれたの。でも私は眠っちゃって、聞くことができなかった。あの時、聞いていたら今のような展開にはならなかったのに……」
「なんて言ってくれたの?」
「『詩織……愛してる』だって……」
「そこまで言ってくれたのに、詩織は反応できなかったの?」
「うん、本当に後悔してる。私も『愛してる』って返せればもっと早くに解決できてたのに、って今でも思う」
詩織の悔しそうな表情をみて、奈津江は本当に後悔していると言うことがわかった。
「ちなみに余計な話だけど、これがきっかけで詩織はMに目覚めたってこと?」
「うん、公人もこれでSに目覚めたって」
「やっぱり……」
「だから、言っているでしょ。最初は仕返しとかそんなだったけど、最後はもうセックスと同義のSMプレイだったって。何度も言ってるけど私たちにとってSMは愛の行為なのよ。」
「………」
「それからあのときから私は公人にあそこまでの暴力はしなくなった。今では公人が私にムチとか蝋燭……」
「それ以上は言うな!話が逸れる!」
To be continued
後書き 兼 言い訳
今回は特に何も書かずにご想像ください。
公人と詩織の倒錯した愛を想像していただければと(こらこらこら
次回はようやく高校入学です。