太陽の恵み、光の恵 外伝
第2集 乱れ桜伝説〜八重花桜梨物語〜
その0 プロローグ
Written by B
キーンコーンカーンコーン
「2年D組八重花桜梨さん。面接を行いたいので、生徒会室に来るように」
放課後、花桜梨は部活の途中で生徒会に呼ばれた。
(何なのかしら?……思い当たる節はあるけど……)
先日の校庭でのあの大立ち回りから1週間。
花桜梨は平常な日々を取り戻していた。
バレー部の仲間も自分のことを理解してくれており、部活動にも支障はない。
そんな仲での花桜梨の呼び出し。
(器物破損はしたことはないけど……何かしら?)
花桜梨はコーチに事情を説明し、部活を途中で切り上げた。
がらがらっ
「失礼します……」
制服に着替えた花桜梨は生徒会室の扉を開けて入る。
「おおっ!待ってたぜぇ、まあここに座りな」
「は、はい……」
生徒会室にはほむら一人が待っていた。
花桜梨はほむらの言われるままにほむらの目の前の椅子に座る。
机をはさんで対峙する2人。
窓の外からは部活動の元気な声が小さく聞こえてきている。
コトン
「そうだ。折角だからこれ飲めよ」
ほむらは花桜梨の前に缶コーヒーを置く。
自分の目の前には既にリンゴジュースが置いてある。
「いいの?」
「ああ、生徒会長のあたしのおごりだ!」
「あ、ありがとう……」
「夏海から聞いたけど、ブラックでいいんだよな?」
「え、ええ……」
ブラックコーヒーの缶を開けて、少しのむ花桜梨。
それにつられるようにほむらもジュースを飲む。
「しかし、そんなのよく飲めるなぁ」
「うん、昔から好きだから……」
「夏海も最近急に飲み始めているけど『苦いッスよぉ〜』とか言ってるぜ」
「まあ、コーヒーの好き嫌いはそれぞれだから……」
「飲み過ぎは体に毒だぜ。まあ、何でも食べすぎは毒だけどな!にゃはは!」
ほむらの笑い声が教室内に響く。
「ところで……面接ってなんですか?」
花桜梨はようやく本題に入る。
するとほむらの顔が急に真剣になる。
「ああ、ごめん……実はあたし……あんたのことが知りたくてな……」
「えっ?」
「急にあんたのことに興味があって……」
じっと花桜梨の目を見るほむら。
2人の間に緊張感が走る。
そして花桜梨はなにか勘違いをする。
「えっ……ちょっと私は同性に興味は……」
「へっ?」
「わ、私はノーマルだから……」
「ば、ば、馬鹿野郎!あたしは女だ!」
ほむらも花桜梨の勘違いに気づき慌てる。
「ご、ごめんなさい……あまりに真剣だったから……」
「あのなぁ、あたしも真面目になるときはあるぜ」
「………」
あまりの勘違いに顔を赤くしてうつむいてしまう花桜梨。
それを呆れてみるほむら。
そこには緊張感はまったくない。
ほむらは椅子の背もたれに寄りかかり、足を机の上に乗せ、両手を頭の後ろにつける。
「いやな、あんたが総番長やってたことがいまだに信用できねぇんだよ」
「えっ?」
「総番長っていうと、茜の兄ちゃんのイメージしかなくて、
あんた見たいな真面目で静かな奴がやってたなんていまだに想像つかねぇ」
「そ、そんな、私は真面目じゃ……」
「それなのに、喧嘩の強さは茜の兄ちゃんなんか問題にならないぐらい強い。
……まっ、あたしも体験ずみだけどな」
「あ、あのときはごめんなさい……」
「謝るな。あれはあたしがふっかけた喧嘩だ。あんたには罪はねぇ」
「………」
「まっ、とにかく。
あたしは八重花桜梨っていう人に興味があるわけよ。
なんで総番長をやったのか。
なんでそんなに強いのか。
なんでひびきのに来たのか。
……よかったらあたしに教えてくれないか?
それが今日の目的だ」
「………」
「無理は言わねぇよ。言いたくないこともあるんだろ?
ただ、ここで言ったことは誰にも言わねぇ。
安心しな。夏海は吹雪に拉致してもらったからここにはいねぇよ」
花桜梨はじっと考えて、ふぅっと息をついた。
「もしかして、それだけのために私を呼んだの?」
「ああ、職権乱用で悪かったけど、2人だけで話する機会ってこうでないとつくれないからな」
花桜梨は思わず苦笑してしまう。
そこまでの熱意に断る理由も考えるのも嫌になってしまう。
「……わかったわ。昔話してあげるわ」
「ああ、ありがとな」
ほむらは大喜びするわけでもなく、真面目な表情でお礼を言う。
「それでいつまでさかのぼるんだ?」
「そうね……幼稚園の頃までさかのぼるわね……」
それは「乱れ桜」と呼ばれ、恐れられていた花桜梨の原点にさかのぼることになる。
To be continued
後書き 兼 言い訳
第2集は花桜梨の乱れ桜伝説についてです。
スタイルは第1集と同じで、
2人の会話から、回顧するという主に会話形式の話にする予定です。
で、ここでの聞き手はほむらにしました。
理由は彼女が一番適任だとおもったから(理由になってないだろ)
いや、一番こういう展開になりそうなのがほむらかな?と思っただけです。
そういうわけで次話は子供の頃の花桜梨の話から。