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太陽の恵み、光の恵 外伝

第2集 乱れ桜伝説〜八重花桜梨物語〜

Written by B
「ところで、いつから番長になったんだ?」
「いつから番長になったって日はないんだけど、徐々に不良になっていったのは確かね」
「それはいつ頃だ?」
「小学校……5年の終わりぐらいかしら?」
「かなり早くないか?」
「でも小学校の不良なんて、わがままなガキと同じよ。今思えばね」
「どういうことだ?」

「授業中に大騒ぎしたり、人の給食を無理矢理奪ったり、先生にたてついたり。
 ただの暴れん坊がすることとたいして変わりないわ。
 不良と言うほどのことなんて、しないわよ。大抵はね」

「確かにな。あたしの周りにもいたけど、所詮その程度だよな」
「でも、私はそんなことはしなかった」
「えっ?」
「だって、先生にたてつくだけ無駄じゃない。ただの自己満足よ」
「じゃあ、あんたは何やってたんだ?」


「夜遊び」


「夜遊び?」



「ええ、夜遊び」
「よ、夜遊びって、夜に男を誘って、それからホテルでそのあの……」

ほむらの顔がかなり赤くなっている。
それをみて花桜梨がクスクス笑う。

「赤井さん。それは誤解よ。
 夜遅くまで繁華街をぶらぶらしてただけ。
 ゲームセンターとか、ファーストフードとか。
 街の明るいところをぶらぶら歩いて、時には地べたに座り込んで、ただじっと通り過ぎる人を見る。
 1人でいるわけだから、やることはそんなものよ」

「親はどうだったんだ?あたしの親も放任主義だけど、夜遅くに帰ることだけは怒ったな」

ほむらの質問に、突然花桜梨の笑みが消えた。
冷たい口調で答え始めた。


「全然。
 心配もしてくれなかった。
 うちの両親は帰りも遅いし、朝は早いから家でもあまり会わない。
 だから、私がどうしようとも気にしてくれない。
 夜12時過ぎて帰ってきても、一切怒らなかった」


「………」


「私、小学生よ!
 夜まで繁華街とかにいて危ないと思わないの?
 連絡もつけられない状態で心配にならないの?
 家に帰ってきても『おかえり』の一言もないのよ!
 『あら?帰ってたの?』って感じで!
 私はあれで何度も傷ついたのよ!
 いくらなんでもひどすぎる!」



ダンッ!



「うわぁ!」
「あっ、ごめんなさい……つい、力が……」

花桜梨は右拳を机に思いきりたたきつけた。
ほむらはそれに驚いてすこし後ずさりした。
それをみて花桜梨はようやく我に返ったようで、慌てて拳を引っ込める。



「でも、あんたがグレたくなるのはよぉ〜っくわかった」
「でしょ?あの頃はとにかく両親が嫌いで嫌いでしょうがなかった」
「辛かったんだな……」

「家に帰りたくなかった……というのもあったかもしれない。
 でも、帰る場所はあそこしかない。
 だから、夜帰る時間が遅くなっていったのだと思う」

「なるほどな……で、今は?」

「一応、心配はしてくれるようになった。
 私も携帯も持つようになったからね。
 でも……あの頃のことを許したわけじゃない。
 今でもあの頃の態度が許せない。
 だから、両親もあまり私にいろいろ言えないみたい」

「まあな、あんたからすれば『何を今さら?』って事だろ?」
「そのとおりね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
花桜梨がグレた訳です。

親と花桜梨の微妙な関係は本編第28部でもちらっと書きましたが冷え切ってます。
あの頃、花桜梨さんは相当傷ついたと思います。

次回から花桜梨の番長への道が始まるのかな?
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