太陽の恵み、光の恵 外伝
第2集 乱れ桜伝説〜八重花桜梨物語〜
その4 Fight
Written by B
「うむ、今のは不良になった訳だよな。じゃあ、喧嘩を始めたのは?」
「う〜ん、夜遊びの時に、ナンパされたのがきっかけね」
「ナンパ?ナンパされたのがなぜ喧嘩に?」
「ナンパをされた男に乱暴されそうになったから」
「ら、乱暴って、ま、ま、まさか、れ、れ、れ……」
ほむらの顔がまた真っ赤になってしまった。
それをみた花桜梨が慌てて否定する。
「ち、違うわよ。そうなるもっと前の話」
「もっと前?」
「私を無理矢理ホテルかどこかに連れて行こうとしたのよ」
「な、なるほど……は、はずかしい……」
ほむらはほっとしたものの、顔はまだ真っ赤のままだ。
「たしか、学ランだったから高校生だったと思った。
私の腕をつかんで無理矢理引っ張ろうとしたから、逆にその腕をつかんで投げ飛ばした。
そうしたら他の男が殴りかかってきたから、両手からのパンチをよけた後に急所に膝蹴り。
後ろから背中を蹴りつけようとする殺気を感じたから、しゃがんでその蹴りをかわしながら回って、軸足を蹴りつけて倒した。
倒してから倒れてきた頭の後頭部を蹴りつけてあげたわ。
最後はみんな慌てて逃げていったわ」
ほむらは目をつぶって花桜梨の話を頷きながら聞いていた。
表情からして、花桜梨の話を想像しているようだ。
「す、すげぇ……ん?」
しばらくしてから目を見開いて驚いた。
ここでほむらが首をかしげる。
「なぁ、今の話だと八重がやっつけたのは……」
「3人」
「そのころの八重は……まさか……」
「小6」
「す、すげぇぇぇぇぇぇぇ!」
ほむらが大声を上げて叫んだ。
その突然の叫びように、花桜梨も驚いていた。
「あ、赤井さん。そこまで驚くことはないわよ」
「い、いや。小6で高校生の男を3人やっつけるなんてすごいぜ」
「そう、そうかしら……でも、次の日から夜歩いていると周りの目が変わっていたのは確かね」
「どんな風に?」
「『誰あれ?』っていうのが、『あの人昨日……すごかったわよ』なんて声が聞こえてきた」
「ちょっとした自慢だな」
「そうでもないわよ。むしろこれからおかしくなったのよ」
「えっ?」
「気にくわない人がそれ以上にいたの。
『なによあの子。生意気よ』とか『今度締め上げてやる』っていう声もたくさん聞こえたわ」
「そんな連中が次から次へと……」
「そう、私を襲ってきた。
『ちょっとツラ貸しな』って言うのもあれば、いきなり『死ね!』って言って襲ってきたのもいた。
1人もあったし、5、6人で来たのもあった。
でも、全員やっつけた。
殴りつけ、投げ飛ばし、蹴りつけてあげた。
情けとか手加減とかしなかった、する理由もなかったから。
みんなすぐに逃げていったわ」
「そうか……すまん、ついあたしが勝手に盛り上がっちゃって……」
「いいのよ。もうすんだことだから……」
ほむらは申し訳なさそうな顔をしながら、頭をぼりぼりとかいている。
「でも、それがつもりにつもって番長への道へとつながったわけだな」
「そういうこと。別に私はそんなの望んでいるわけじゃないのにね……」
To be continued
後書き 兼 言い訳
花桜梨の格闘家への道が始まりました(違う!)
格闘シーンは普通ならもっと色々掛けますが、こういう状況での回想となるとこのぐらいかと。
次回も番長への道の途中になるかと。