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太陽の恵み、光の恵 外伝

第2集 乱れ桜伝説〜八重花桜梨物語〜

Written by B
「ところで、喧嘩初めてからなんで、偉くなったんだ?」
「私もよくわからない。気がついたら持ち上げられてたって感じで」
「勝手に取り巻きが付いてきたってことか?」
「そういうこと」


「いつの間にか私の周りに人がいて。『何してるの?』って聞いたら、『気にしないでください』だって」
「ふ〜ん」
「だから気にしなかったら、いつの間にか部下を自称していた。近くのチンピラに『ほら!八重様のお通りだ!どけ!』とか言って」
「虎の威を借る狐だな」
「まさしくそれ。部下と認めたわけじゃないのに、勝手に幹部なんか名乗ったりして。でも面倒だから、ほったらかしにしていた。そうしたら、勝手に勢力を拡大させてた」


「最初に気が付いたらどのぐらいになってたんだ?」
「『集会です』って言われて無理矢理連れてこさせられたら、500人ぐらいいた。びっくりして何も言えなかった」
「うわぁ!すげぇ、しかしどうやってそんなに勢力を?」
「私の名前を使って手下になるように脅してたみたい」


「ひでえな。そんな奴らの中にこの前の奴が……」
「そう……」
「………」
「………」


沈黙が5分ほど続く。
2人とも動かずにじっと黙っている。



「でも、そんなひどい人間ばかりじゃなかったみたい」
「えっ?」
「こんな私にあこがれてた人もいたようなの」
「珍しいな、変わってる人もいるもんだな」
「本当ね。うふふふ」
「?」

花桜梨がくすくすと笑い出した。
思い出し笑いに近い笑い方。
ほむらは意味がわからず首をかしげるばかり。



「あのね、昔、私がその人を助けてたのが理由だって。私もよく覚えてないけど」
「助け?そのときに人助けでもしたのか?」
「話だと、不良5人に囲まれてたところを助けてたみたい。たぶん、襲うつもりだったんでしょうね」
「でもどうして助けようと思ったんだ?」
「不良たちの顔に嫌気がしただけ。人間のクズのような顔をしてて、許せなくなってきて……という感じだったかも」
「なんか、おまえも妙に変な因縁だな?」
「そうね。自称部下たちが周りにいて、ストレスが爆発したのかもしれない」


「で、結果は?」
「1人5秒ぐらいで気絶させちゃったみたい、それも左足だけで」
「うわぁ、すげぇ……で、助けた女の子は?」
「嬉しくて、何度もお礼を言ってたって。何度も何度も頭を下げて」
「へぇ」
「その子。私にあこがれちゃったのと、恩返しがしたいからって理由で、自分から手下になったんだって」
「本当に変わりもんだな……」
「そうね。だって、普通の女の子が私個人へのあこがれだけで不良になるんですもの。変わってるわよね」



ほむらは花桜梨の話をじっくりと聞いていたが、ほむらがあることに気が付いた。


「なあ、今の話、全部そいつから聞いた話だよな?いつ聞いたんだ?」


「おととい」


「ふ〜ん、おとといかぁ……えっ?今なんて言った?」


「おととい」


「そうだよな。おととい、って言ったよな……えええっ!」


「そういうこと」


二度聞いてようやく理解したほむらは驚いて思わず立とうとしたところを慌てて座り直す。
それをみて花桜梨はにっこり。


「な、なぁ……もし、嫌じゃなければ……」
「バレー部の前キャプテン」
「……ええっ!」
「そうなの」
「はぁ……知らなかった……あたしゃびっくりだよ」
「私もびっくりした。向こうはもっとびっくりしてたみたいだけど」
「どうも変だと思ったんだ。あれだけ騒動がありながら、バレー部がすぐに静かになったから……なるほどな」
「そういうことなの」



「でも、いい理解者が現れてよかったじゃねぇか」

「そうね。私を理解してくれる人がいるって、こんなにすばらしいって初めて知った。
 それに友達のありがたさも。
 あのころ、周りにはたくさん人がいたけど、実際はひとりぼっちだった。
 話はするけど、仲良くはなれなかった。
 だから、今の私は本当に幸せ。
 いい仲間がいて、いい友達がいて。あのころの私では想像できないくらい幸せかもしれない」

「でも、そのころはあれよあれよという間に番長のトップへと一直線……」
「そう、関東総番長の地位を手に入れるのはすぐだったわね」
To be continued
後書き 兼 言い訳
花桜梨の周りに人が寄り添う様子。
そして、本編にも書いてある、バレー部の前キャプテンとの初遭遇の状況を書いてみました。

さて次回は関東総番長になるシーン。そうあの方達との遭遇の話でも。
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