太陽の恵み、光の恵 外伝
第2集 乱れ桜伝説〜八重花桜梨物語〜
その6 Top
Written by B
「そして、いよいよ関東総番長になるってわけか」
「そう。なりたいわけじゃないし、頼まれてもいないのに」
「なぁ、関東総番長なんて名前を知ってたのか?」
「全然。『番長の頂点なんですよ!』とか説明してくれた。頂点になんてなる気もないのにね」
「ふ〜ん」
「結局、子分同士の喧嘩がきっかけだったんだろ?」
「えっ?知ってるの?」
「いや、昨日、本人から聞いた」
「えっ?」
「いや、あたしが昨日押しかけて薫のにいちゃんと、九段下のねぇちゃんに聞いてみた」
「そうなんだ……じゃあ、詳しいことはいいわよね」
「ああ……
しかし、二人とも呆れてたぞ。
薫のにいちゃんは
『あんなにコテンパンにされたのは最初で最後だった……今、金を積まれても二度とやりたくない』
って言ってたし、九段下のねぇちゃんも
『私もいくらハンデをもらっても嫌だね。それに今のほうが強いんじゃないかしら?』
だって。」
「あははは……」
花桜梨は苦笑い。
ほむらも声にはださないものの苦笑いしている。
「でも、関東総番長になって何か変わったのか?」
「何にも。
変わったのは自称子分達。
ただでさえ、偉そうに威張っていたのが、余計に威張ってた。
あちこちで好き放題してたみたい。
だから、なんか評判も悪かったみたいだけど」
「あー、なんか、想像できるなぁ」
「でしょ?
でも、私は人のこと気に掛けるつもりなんてさらさらなかったから、ひとりでぶらぶらしていただけ。
時々、突然喧嘩をふっかける人がいたけど、足だけで片づけてたな」
「足だけって……」
「そういう人って何も考えずに前からかがんだ状態でつっこんでくるから、かかと落としで一発KOできるの」
「な、なるほど……」
「それに、私に挑戦状をたたきつける大物もいなかったみたい。これはさっき話したキャプテンから聞いたんだけど」
「ふ〜ん、しかし、それでも関東総番長って肩書きが欲しい奴が現れたってことだろ?」
「そういうことね」
「それじゃあ、そういう意味では変わったってことじゃねぇか?」
「う〜ん、そうかもしれないわね。でも、喧嘩をふっかけて来た人は前々からいたから実際のところは変わってないの」
「なるほどねぇ、しかし、警察に目はつけられなかったのか?」
「警察?」
「だって総番長だろ?」
「う〜ん、確かにね。
でもそれはなかったみたい。
だって、私、そのころは何も悪いことしてないもの。
万引きなんてしたことないし。
タバコも一度吸ったけど気持ち悪くて、また吸おうなんて思わなかった。
シンナーは一度誘われたけど、あのビニール袋をす〜す〜吸っている馬鹿な格好をみて吸わずにやめた。
お酒は何度も飲んだけど、最後は『頼むから飲むのだけはやめてくれ』って必死に頼まれて……
理由わかるでしょ?」
「ああ……嫌なほどよくわかる」
再び二人とも苦笑い。
「しかし、何も変わらない生活か……退屈じゃなかったか?」
「退屈、それは不良になってからずっとそう」
「そうか……じゃあ、それからどうするつもりだったんだ?」
「う〜ん、このままずっと続けるつもりだった。
退屈退屈とか言っている割には、その退屈に慣れちゃったからかもしれないわね」
「そういうことか、じゃあなんで総番長やめることにしたんだ」
「……きっかけは、とあるところからスカウトされてね」
「どこ?」
「香港マフィア」
「ええっ?……」
花桜梨の顔が暗くなり、ほむらの顔が青くなっていた。
To be continued
後書き 兼 言い訳
「さて次回は関東総番長になるシーン。そうあの方達との遭遇の話でも。」
と前回は書いていたのですが、すでに一文字の兄が妹にしゃべっているの改めて書く必要性があんまりだったのでやめました。
で、今回は総番長になった直後の話。
本人はなるつもりがまったくなかったのだから、な〜んにも変わってないのかな?と思いました。
で、こちらも話が終盤に入りそうな感じです。
ここから花桜梨が元に戻り始めることになります。
ええ、最後とんでもないことを言ってますが、そうなんです!