太陽の恵み、光の恵 外伝
第3集 同棲日記〜奈津江と勝馬〜
その2 藤崎詩織
Written by B
「続き続き♪」
「もう、詩織、そんなに嬉しそうな顔をしなくてもいいじゃない」
「だって、こんな機会滅多にないもん♪」
詩織は奈津江の日記を1日1日丁寧に読んでいった。
最初が高校入学の日だから、がんばれば全部読める。
そう思ったのだろうか。
そして、最初のページから少し読んだところで詩織の手が止まった。
「あっ、私のことが書いてある!」
えっ?そんなこと書いてあったっけ?と言いたげな顔で、奈津江が横から日記をのぞき込む。
4月△日 曇り
体育の授業で入学式で挨拶していた藤崎さんと初めて話した。
真面目そうな人だと思っていたがそうではないらしい。
気楽に話してみたら、気軽に返事してくれた。
授業中ペアになって授業を受けてみたら、意外とアグレッシブな人みたい。
運動もできるし、バスケ部にそれとなく誘ってみたら既に吹奏楽部に入っているって。
残念。
そして今日も勝馬が……
4月□日 晴れ
………
あと、詩織って、ただもんじゃない。
みんなは知らないかもしれないけど、絶対に猫かぶってる。
だって、真面目な優等生が砲丸投げの玉をオーバースローで私めがけて投げるわけがない。
体育の授業で「こんちくしょう!」とか「ちっ…」とか言うわけがない。
びっくりしたような、ほっとしたような。
まあ、絵に描いたような真面目な優等生ってタイプは好きじゃないからね。
もっと話をしてみようかな。
案外いい友達になれるかも。
放課後は恵と一緒に買い物で……
「やだぁ!私こんなひどい言葉なんて使ってない!いや〜ん♪」
「おい」
詩織は両手を両頬に当て、首を横にふりいやいやしている。
奈津江はそのとなりで、手の甲を詩織の体に当て、一応突っ込みの仕草をする。
「しかし、なんで私と友達になったの?」
「えっ?」
「後で聞いて驚いたけど、本当の友達って少なかったんだろ?どうして私となんか……」
「だって、優等生とか真面目とか気にせずに一人で近づいてきたのって、奈津江ちゃんと白雪さんぐらいよ」
「そうなの?」
「あとは好雄くんや白雪さんの紹介で、知り合った人ばかりだから」
「ふ〜ん」
「そういう外見だけでみなかったから、私も信じられると思ったのが正直な感想ね」
「ありがとう、そういってくれて」
こんな会話をしながら、詩織は勝馬の日記をぺらぺらとめくっている。
「詩織、勝馬の何を探しているの?」
「えっ?私のこと書いてないかな?って思って」
「どうして?」
「いや、なんとなくねぇ……」
「……もしかして、『こんな私みたいな美人のことを書かない訳がない』って思ってる?」
「えっ〜?やだぁ〜!そんなこと考えてないわぁ〜」
「こら、絶対思ってただろ」
さっきと同じ仕草の詩織に同じように突っ込む奈津江だった。
「あっ、み〜つけた。詩織って字が書いてある」
「えっ?あの馬鹿、他の女の子のこと日記に書くなんて……」
「あぁ〜、嫉妬してるなぁ〜?」
「嫉妬なんかしてません!」
とか、言っている奈津江だが視線はしっかりと勝馬の日記へと向かっている。
4月△日 晴れ
体育の時に奈津江といた女、たしか藤崎っていったよな。
すげぇ美人だな。
スタイルもいいし、なにより美人なのがポイント高いな。
ぜひお近づきになりたいと思うが、そんなことしたら奈津江に絞められるだろうな。
しかし、奈津江のお尻も引き締まっててよかったなぁ。
奈津江、あんなにスタイルよかったっけ?
いや、俺の気のせいかもしれないな。
うん。そうだ。
………
「………」
「……最低……」
詩織は頭をテーブルにぶつけ、奈津江は頭を抱えている。
「相変わらずの日記ね……」
「本当にこの頃の勝馬って、まったくやる気なかったからね……」
「で、でも、奈津江ちゃんのスタイルを褒めてるわよ」
「でも、気のせいにされちゃってるのがすごく不満よ!」
奈津江はふくれっ面をしていた。
相当不満らしい。
To be continued
後書き 兼 言い訳
CDでは同じ部という設定なので簡単な詩織と奈津江の出逢いですが、
ここでは同じ部ではないので、詩織と奈津江の出逢いは別に設定しなくてはいけません。
今回はそういう部分を書いてみました。
さて、さっさと2人に事件を起こさせようかな(こら