太陽の恵み、光の恵 外伝
第3集 同棲日記〜奈津江と勝馬〜
その3 休日の朝
Written by B
「ところで、奈津江ちゃんって、昔から芹沢くんを起こしてるの?」
「そうよ」
「土日も?」
「部活がある日には途中で寄り道して起こしてたわよ」
「なんで?」
「さぁ、なんでだろうね……私も気づいてたらそうしてたんだよね」
「そういうことが、ここには書いているのね」
「あっ、いつの間に続きを読んでるの!」
5月☆日 曇り
日曜日なのにまた勝馬を起こしてた。
なんでだろう?
昔は休みの日はそんなことなかったのに。
少し前は部活がある日は起こしてたんだけど……それもいつからなんだろう?
今では部活もなんにもないのに勝馬を起こしている。
起こしたらそれですぐに家に帰ってしまう。
必要ないんだけど……どうしてなんだろう?
習慣?義務?
今では勝馬を起こさないと逆に私が不安になっちゃう。
どうしてだろう?
5月△日 大雨
はぁ、私、どうしちゃったんだろう?
こんなに勝馬に会いたいって思うなんて。
こんな大雨の休日に勝馬を起こしに行かなきゃって思うなんて。
お父さんもお母さんも呆れてた。でも行きたかった。
着いたら勝馬はやっぱり寝てた。
むかつくとかそんなことはなかった。
勝馬の寝顔をみて、ほっとした自分がいる。
別に大雨で勝馬が死ぬわけじゃないのに。
(勝馬なら地震がきたって死にそうにないけど)
……私にとって勝馬ってなんだろう?
「なに言ってるの?奈津江ちゃんにとって大切な人でしょ?」
「あのね、詩織。私はまだそれに気づいてないの。ただの幼馴染みとしか思ってなかったわよ」
「表面上は、でしょ?」
「そうよ」
「でも、心の奥ではもう好きで好きでしょうがなかったんじゃないの?」
「………」
「わ〜い、私大正解!」
わざとらしく万歳をする詩織。それを苦々しく横から見ている奈津江。
「あのさ、詩織も分かるでしょ?幼馴染みの男に恋しているって、きっかけがないと気づかないでしょ?」
「そうね、私もそうだった」
「でしょ?今思えば、勝馬が好きだったから、土日も起こすようになったのだと思うけど……あのときは自然に行動を起こしてたのよ」
「ふ〜ん、じゃあ芹沢くんはどうだったのかしら」
「さぁ?……って、詩織、それ探してるの?」
「もちろんよ」
5月●日 晴れ
今日も奈津江が起こしにきた。
いつの間にか土日の朝も起こしにきてる。
起こすとそれだけですぐに帰っちまう。
別に土日ぐらい寝かせてくれてもいいだろ。
と、思うんだけど、なんだろう?
俺、いつの間にか奈津江を待っている気がする。
珍しく朝起きても、奈津江がせっかく起こしに来るから、と思うと二度寝しちまうんだよな。
別に起きたところで出迎えて奈津江の腰を抜かさせても面白かったんだけど、なぜかそんな考えがないんだよな。
たまに奈津江が来ないときがあるんだけど、心配になっちまうんだよな。
俺、頭おかしくなったのか?
5月△日 大雨
やばい、おれ頭おかしい。
奈津江が起こしに来てくれて嬉しい俺がいる。
奈津江が大声で起こす声を聞いて嬉しい俺がいる。
本当に、俺どうかしてる。
風邪引いたか?
「………」
「なによ。もうラブラブじゃない」
「どこが!」
「もう、二人とも奈津江ちゃんが起こしにくることを楽しみにしてるんじゃない」
「たしかに、そう言われると文句言えないけどさ……」
「電話で起こさなかったの?」
「あるけど、それで勝馬が起きると思う?」
「あっ……そうか」
「最近勝馬も携帯持つようになったから、電話でも連絡できるけど、そもそも私が直接行くしか満足しなかったのよ」
「ところで今はどうなの?一緒のお布団で毎日寝てても奈津江ちゃんが起こしてるの?」
「え〜と……」
「起こされることもあるんだぁ〜、うわぁ〜、奈津江ちゃんったらラブラブゥ〜」
「なんでそういうことになるのよ!」
「そうでしょ?目を開けると芹沢くんの顔が真正面にあって『奈津江、おはよう』なんて言われて、そのあとおはようのキスなんてしちゃって、それで顔を真っ赤にして『おはよう』なんて言いながら、ときめいちゃう奈津江ちゃんなんだ。いやらしぃ〜」
「それは詩織でしょ!」
顔が茹で蛸のように真っ赤になっている奈津江がどう反応しようが、詩織のからかいの絶好の標的である。
To be continued
後書き 兼 言い訳
物語はまだ出だしです。
ここでは物語が始まる前の二人の状態についてちょこっと挟んでみました。
さて次から物語を動かしていきますか。